イタリアのトスカーナに、ボルゲリという小さな町があります。トスカーナというとつい、どこまでも続くなだらかな丘と糸杉に囲まれた石造りのヴィラが点在する風景を思い浮かべがちですが、ボルゲリはそんなイメージとはまったく違う海岸から数キロのシーリゾートの一角にあります。サッシカイア、オルネライアというワインが作られていることも知られています。
ここに1軒の素敵なワイナリーがあります。名前は『LE MACCHIOLE(レ・マッキオーレ)』。オーナーは39歳の女性、CINZIAチンツィアさん。カベルネ・フラン100%のパレオ(PALEO)、メルロ100%のメッソリオ(MESSORIO)そして、シラー100%のスクリオ(Scrio)と3種類の単一品種でのワインを作っています。
『レ・マッキオーレ』がスタートしたのは1983年。チンツィアさんのご主人ユージェニオさんが、かねてから念願だったワイン造りの夢を実現。現在ボルゲリでもっともいいテロワールといわれる海岸から約5キロの街道沿いにワイン畑を作りました。いくつかのワイナリーはあったものの、その頃のボルゲリはまだまだワインの新興地。その土地にどのブドウが合って、どのように育てることが最適なのかまだ答えは出ていませんでした。ユージェニオさんは、あらゆるブドウをさまざまな方法で植えました。ブドウの樹の間隔も現在とはまったく違う方法で。毎年、毎年、あらゆる改良を重ね、合わないブドウ樹は植え替え、新しいブドウ畑も増やし、レ・マッキオーレのワインはどんどんおいしくなっていったのです。そして、1995年、ボルドーで行われたブラインドテストで、その頃はまったく無名であったパレオ92年が、ボルドーワインのコス・デストゥルネルに次いで2位になったのです。けれど、そんなことで2人のワインへの情熱は満足しません。その後もよりいいブドウ作りと醸造へと努力を続けていました。
ところが、そんな夢追いのさなか2002年、ユージェニオさんが突然の他界。それまで陰で支えていたチンツィアさんは、悲しみを乗り越えて、2人の夢をさらに大きく広げています。
2人が出会ったのはまだ子供のころ。父親の経営するバー&食品店の手伝いをしていたユージェニオさんが、おつかいに来ていたチンツィアさんをいつもからかっていて、彼女はユージェニオさんがだいっきらい。でも、もちろんユージェニオさんはチンツィアさんのことが大好きでちょっかいを出さずにはいられなかったよう。彼女が高校生になったころ、そんな彼の気持ちにようやく気づき、2人はめでたく結ばれたのだという。2人でワイナリーを始めたころは、チンツィアさんはまだ16歳。そんな少女のころから、ユージェニオさんとともに人生をかけてきた夢を、いまも、これからもずっと追い続けるのだという。
「1995年、パレオが認められることで、ボルゲリ”という土地がワイン造りに適していると世界に知られてとてもうれしいです。私たちは単一品種にこそテロワール(土地の個性)が現れると思っているので、単一品種のワイン作りに力を入れています。ボルゲリは比較的肥沃な土地で、海から近いので干ばつの心配はありません。今までの経験から、一番適するのはカベルネ・フラン、そして、次にメルロが合っていると思っています」と、チンツィアさん。
レ・マッキオーレの単一品種は3種。カベルネ・フラン100%のパレオ、メルロ100%のメッソリオ、そして、シラー100%のスクリオ……。
なぜ、シラー100%のワインがあるんでしょう?
「シラーは、痩せて乾いた土地が適すると考えられていて、ボルゲリの土地で育てるのは大変です。ものすごく手をかけなければおいしいブドウ、そしてワインにはなってくれないんです。けれど、ユージェニオがシラーを愛していたんです」と、懐かしそうに話すチンツィアさん。
「どんなに大変でも、スクリオは作り続けていきたいと思います」と約束してくれました。
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海岸から7,8キロの丘から、海岸を見下ろすと、遠くに青い地中海が見える
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左から、カベルネ・フランのPALEO、メルロのMESSORIO、そしてシラーのScrio
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パレオのエチケット・デザインは松の木。ボルゲリにはこんなかたちの松がいいっぱいある
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試飲用のボトルを自らあけてくれるチンツィアさん(左)。パレオ2002のエレガントな味わいに一同感激
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